モダンリビング・コラム
下田結花の
「心地よさのつくり方」

撮影/下村康典

見せていい物、見せてはいけない物ーー
収納は分けることから始める

 多くの方からインテリアについて質問を頂きますが、半分くらいは収納に関してです。どんなにきれいに片付けても、家族が散らかしてしまう。子供がいるから片付かない。収納スペースが圧倒的に足りない…など悩みは尽きないようです。持っている物の量、家族構成、住んでいる家、収納スペースによって答えは違ってきますが、私が300件以上の住宅を取材して、思ったことーーそれは全てを見えないようにすることが収納ではない、ということです。普段よく使う物や自分が眺めていたい物もあります。どうしたら物があっても汚くなく、すっきりと見えるのでしょうか。

 海外の住宅を取材している時、こんなに物があるのにどうして雑然としないのだろう、と思うことが度々ありました。そうした家をよく見てみると、出しておいて美しい物しか目に入らないようになっているのです。暮らしている以上は、実用性が優先され、美的でない物もあります。そういうものは扉付きの棚の中にしまわれています。例えばイタリアの家庭では、シンクの中にはスポンジや洗剤を出しておきません。扉の中に受け皿があって、そこにしまうようにしています。

 そしてもう1つ、人工的な素材は表に出ていません。例えば見えるところにある物はほとんどが天然素材です。プラスティックがないだけで、部屋の景色はずいぶん変わります。

 見せて良い物と見せてはいけない物を分ける。それが収納の第一歩のような気がします。緩やかな基準なので、どなたにでもできることではないでしょうか。そして見せてはいけない物は徹底的にしまう。収納問題の解決は、そこからから始めてみませんか?

下田結花(モダンリビング・パブリッシャー)