第13回

環状八号線
「砧公園(用賀)・上野毛」で
暮らす・貸す住まい

環状第8号線(環八)の瀬田交差点付近は、東名高速と第三京浜に挟まれ、日本のモータリゼーションにとって重要な場所です。そのため渋滞することも多いですが、周辺には、砧公園(用賀)や上野毛など、緑豊かで芸術や遺産に溢れ、魅力ある住宅地が広がっています。今回は、このエリアの地域の魅力や歴史と不動産動向について紹介します。

ここがポイント
  • 駅から砧公園までは用賀プロムナードが案内。道中は芸術で溢れ、世田谷美術館へと続く。
  • 上野毛は国分寺崖線の上に位置し、崖は田園調布まで続く。崖地には野毛古墳群がある。
  • 環八奥の住宅地域の地価は、鉄道の駅の評価や、その利便性で価格差が生じている。
  • 周辺の賃貸住宅は圧倒的に鉄道の周辺にある。価格は、区平均値より広いタイプは高い。

1.世田谷区内の環八周辺は、日本のモータリゼーションにとって重要な場所。

環状第8号線は、羽田空港(大田区)を起点とし、世田谷区、杉並区などを経て、北区赤羽付近に至るまでの44.2kmの道路です。通称「カンパチ(環八)」。この全線開通は2006年ですが、本格着工から約50年、旧東京市の構想からは約80年もの歳月を要しました。

環八は都道です(一部国道と重複)。都内には1~7号の環状道路もあります。ほかの環状道路との違いは、環八が東京から放射線状に伸びる各高速道路のインターチェンジ(IC)と接するために、平日だけでなく休日にも混雑することです。特に、東名と第三京浜に挟まれている瀬田(国道246号との)交差点付近は、渋滞の名所です。

瀬田交差点付近は、それでも環八のなかで早くから拡幅整備された場所であり、交差点から第三京浜ICまでは国道466号との重複区間です。それだけ世田谷区内の環八周辺は、日本のモータリゼーションにとって重要な場所と考えられます。

2.環八奥の住宅地域の地価は、鉄道の駅の評価や、その利便性で価格差が生じている。

瀬田交差点から北上して東名高速の東京ICを超えると、左側に緑豊かな公園が広がります。都立砧公園です。東京ドーム8個分に相当する広大な公園には、野球場などの運動施設だけでなく、世田谷区立の美術館もあります。

砧公園の最寄駅は東急田園都市線の用賀駅です。駅から公園までは、用賀プロムナードと呼ばれる道路に案内されて迷うことはありません。道中は芸術で溢れていて、公園までの時間を忘れさせ、世田谷美術館へ向かう気持ちを高揚させてくれます。

環八から東西に少し入ると住宅地が形成されています。その地価は、同様の住宅街区が形成されていれば、鉄道の最寄り駅の評価や、駅からの距離、商業施設などの利便性で価格差が生じています。また、二子玉川を除いて、多摩川に向かうと価格が下がる傾向にあります。

世田谷区の都市計画資料に追記しています。

  • ※1 国土交通省の公示価格(*印)および、東京都の基準地価からグラフを作成しています。
  • ※2 住所は公示地(*印)、基準値の所在を示し、丁目と番地まで表示しています。
  • ※3 住所後ろの()内は、都市計画法の用途地域を略して表示しています。
    1低専=第一種低層住居専用地域。低層住宅の良好な住環境を守るための地域。

3.環八周辺の賃貸住宅は圧倒的に鉄道の周辺にある。ファミリー向けが区平均値より高い。

瀬田交差点から反対に1km南下すると、東急大井町線の上野毛駅があります。上野毛駅の西方には五島美術館があります。東急電鉄をはじめ、現在の私鉄の基礎を作り上げた五島慶太が、自らの財力で集めた美術品が展示保管されています。

上野毛駅から多摩川へ向かうと急な下り坂です。ノゲは崖を意味します。国分寺崖線に含まれ、田園調布まで続いています。この崖地には野毛古墳群を構成する古墳が数多くあります。隣接の荏原台、田園調布の古墳群と併せて、築造年代は5世紀前半~6世紀とされています。

環八周辺の賃貸住宅は圧倒的に鉄道の周辺にあります。また、完成された住宅街の中にあり、二子玉川にも近いので、単身よりはファミリー層に需要があるエリアです。そのため賃料は、世田谷区の平均値より、1Rから2DKの狭いタイプは低額に、2LDK以上の広いタイプは高額に設定されています。

住環境の整った世田谷区の環八周辺は、自動車を利用して家族とレジャーにでかける方には、高速道路へのアクセスに便利なエリアです。住宅の購入をご検討の方だけでなく、賃貸併用住宅などへの建て替えをお考えの方にも、道路の利便性は入居者のニーズのひとつに加えることができます。そうしたニーズについても、住宅展示場の担当者と相談すると良いでしょう。

※4 世田谷区の平均値は、不動産情報サイトアットホームの家賃相場から、それ以外の地域は、2018年2月6日現在で(公財)東日本不動産流通機構レインズに募集掲載中の物件データから、グラフを作成しています。

筆者:安食 正秀 (相続アドバイザー協議会R認定会員 上級アドバイザー)

1963年東京生まれ、立教大学経済学部卒。
2006年7月、株式会社アセット・アドバイザーを設立。財産を次世代に承継することを最優先に、顧客の不動産の全体像を把握し、様々な視点から不動産の相続対策の立案、問題解決および実務支援を行う。夕刊フジで「激変!相続税に備える」を連載。
2016年1月千葉テレビに出演。首都圏を中心にセミナーや執筆など人気講師として活躍中。

©2018 Next Eyes.co.Ltd
本記事はネクスト・アイズ(株)が記事提供しています。
本記事に掲載しているテキスト及び画像の無断転載を禁じます。