第6回

~税金~住宅をめぐる税金の特例

不動産売買時や取得時にかかる税金には、所定の申告をすることで、軽減措置や税額控除を受けられる特例制度があります。住宅をめぐる税金はその額が大きいので、特例制度を賢く活用して、少しでも節税を図りたいものです。申告方法や提出書類はそれぞれ異なりますので、詳しくは所轄の税務署や各都道府県税務事務所などにお問い合わせ下さい。

住宅取得資金の贈与に関する特例

暦年課税制度

住宅の購入資金を親などから援助を受けた時は、通常の贈与(年間110万円)のほかに、次のような非課税措置が講じられています。

暦年課税制度における非課税限度額一覧
住宅取得の契約年月 良質な住宅用家屋 左記以外の住宅用家屋
平成28年 1,200万円(1,310万円) 700万円(810万円)
  • ※1.( )内は通常の贈与年間110万円に各年の非課税限度額を合算したものです。平成28年であれば「良質な住宅用家屋」の場合は110万円に非課税限度額1,200万円の合計1,310万円、「これ以外の住宅」は110万円に非課税限度額700万円の合計810万円になります。
  • ※2.「良質な住宅用家屋」とは、省エネ等基準(省エネルギー対策等級4(平成27年4月以降は断熱等性能等級4)相当以上であること、耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上であること又は免震建築物であること)に該当する住宅用家屋であること、一次エネルギー消費量等級4以上に該当する住宅用家屋であること又は高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上に該当する住宅用家屋であることにつき、一定の書類により証明されたものをいいます。

相続時精算課税制度

贈与税と相続税を一体化して考える制度ですが、満60歳以上の親から(平成31年6月30日まで年齢制限はありません)満20歳以上の子へ財産を贈与した場合、2,500万円まで贈与税を非課税として、親が亡くなった時に贈与された財産を相続税の課税財産に加算する制度です。この「相続時精算課税制度」と前述した「住宅資金の贈与に関する非課税措置」を利用すると次の一覧表のとおり非課税となります。なお、「相続時精算課税制度」を選択すると、その後の贈与について、通常の贈与制度(年間110万円まで非課税)を利用できませんので注意を要します。

相続時精算課税制度における非課税限度額一覧
贈与年 良質な住宅用家屋 左記以外の住宅
平成28年 3,700万円(2,500万円+1,200万円) 3,200万円(2,500万円+700万円)
  • ※1.( )内は「相続時精算課税」の非課税限度額2,500万円と「住宅資金贈与に関する特例」のそれぞれの金額を示しています。

住宅ローン控除

住宅ローン控除とは、住宅ローン等を利用してマイホームを新築、購入または増改築等をし、一定の要件に当てはまるときに、その新築等のための借入金の年末残高を基に計算した金額を、居住の用に供した年以降の各年分の所得税額から控除できるものです。

借入金の年末残高×控除率=控除額
(居住開始年度により、控除できる上限金額、控除率等が異なりますので別表1、2を参照して下さい)

平成27年度税制改正において、住宅ローン減税の適用期限が延長され、平成31年6月30日までの間に居住の用に供した場合に適用できます。延長期間における控除期間、借入金の年末残高の限度額及び控除率、最大控除可能額等は(別表1、2)のとおりです。

(別表1)一般住宅の控除額等
居住年 対象住宅 住宅借入金等の年末残高の限度額 控除率
平成26年4月1日~
平成31年6月30日
10年間 4,000万円 1.0% 400万円
(別表2)「認定長期優良住宅」と「認定低炭素住宅」に係る控除額等
居住年 対象住宅 住宅借入金等の年末残高の限度額 控除率
平成26年4月1日~
平成31年6月30日
10年間 5,000万円 1.0% 500万円
  • ※1.「個人住民税における住宅借入金等特別税額控除」により、所得税から控除しきれなかった控除額を翌年度分の個人住民税から控除する制度が創設されました。個人住民税からの控除額は、その年分の所得税の課税所得金額等の7%(最高136,500円)が限度となります。

主な適用要件

  • ◎その者が主として居住の用に供する家屋であること
  • ◎住宅の引渡しまたは工事完了から6ヶ月以内に居住の用に供すること
  • ◎床面積50㎡以上あること
  • ◎店舗等併用地の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること
  • ◎借入金の償還期間が10年以上あること
  • ◎年収が3,000万円以下であること

認定長期優良住宅新築等特別税額控除(投資型減税)

ローン減税は、あくまでも住宅ローンを利用して建設・購入する人が対象ですが、長期優良住宅については、ローンを利用しない人にも減税が適用されます。認定長期優良住宅の新築等を行った場合、一定の要件の下で、当該長期優良住宅の新築等に係る標準的な性能強化費用相当額の10%に相当する金額をその年分の所得税の額から控除できます。

(別表)「認定長期優良住宅」の新築等の控除率等
居住年 対象住宅 控除対象限度額 控除率 最大控除可能額
平成26年4月1日~
平成31年6月30日
認定長期優良住宅
認定低炭素住宅
650万円 10% 65万円

認定長期優良住宅等について 講じられた構造及び設備に係る標準的な費用の額
× 10% = 認定長期優良住宅新築等特別税額控除額

  • ※1.本制度(投資型減税)を適用する場合には、住宅ローン控除は適用できません。

住宅の譲渡に係る3,000万円の特別控除

住宅を売った場合に譲渡所得が生じても、この特別控除を適用することにより、譲渡益の3,000万円までは税金がかかりません。 この適用を受けるには確定申告書にこの特例(措法35条)を選択したことを記載し、必要書類を添付しなければなりません。

適用要件

  • ◎現に居住している家屋を譲渡した場合
  • ◎現に居住している家屋とともにその敷地である土地等を譲渡した場合
  • ◎譲渡をその家屋に居住しなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに行った場合
  • ◎譲渡の相手が配偶者や親子など特別な間柄でないこと
  • ◎前年又は前々年に次の特例を受けていないこと
  • 1. この3,000万円控除の特例
  • 2. 居住用財産の買い換え・交換の特例
  • 3. 居住用財産買い換えの場合の譲渡損失の繰越控除

住宅資産の買い換え特例

売却した住宅資産の価格と同額、またはそれ以上の住宅資産に買い換えた場合、次に住宅を売却するときまでの税金が繰延べられます。

この適用を受けるには確定申告書にこの特例(措法36条の6)を選択したことを記載し、必要書類を添付しなければなりません。

譲渡資産の譲渡価格 <又は= 買い換え資産の取得の場合
譲渡所得 = 0で課税されない

譲渡資産の譲渡価格 > 買い換え資産の取得の場合
(譲渡資産の譲渡価格(A) - 買い換え資産の取得価格(B)) - (譲渡資産の取得費+譲渡費用)
× (A – B)/A = 長期譲渡所得の金額 ←課税される

適用要件

  • ◎その家屋又は土地等が、譲渡した年の1月1日に所有期間が10年を超えていること
  • ◎本人の居住期間が10年以上のもの(相続等の取得の場合は30年以上)
  • ◎居住しなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに行う譲渡
  • ◎平成29年12月31日までの譲渡であること
  • ◎平成24年1月1日以降は、居住用財産の売却代金の額が1億円を超えないこと
  • ◎買い換える建物の床面積が50㎡以上のものであり、買い換える土地の面積が500㎡以下のものであること
  • ◎買い換える建物が、耐火建築物の中古住宅である場合は、取得の日以前25年以内に建築されたものであること
  • ◎譲渡年の前年1月1日から譲渡年の12月31日までの間に取得をし、その翌年の12月31日までに居住するもの又は見込みのもの
  • ◎譲渡の相手が配偶者や親子など特別な間柄でないこと
  • ◎前年又は前々年に次の特例を受けていないこと
    • 1. この3,000万円控除の特例
    • 2. 長期譲渡所得の税額の軽減
    • 3. 居住用財産買い換えの場合の譲渡損失の繰越控除

住宅資産の買い換えによる損失の繰越控除

住宅の買い換えにより譲渡損失が発生した場合、その譲渡損失は翌年以降3年間に渡り、総所得金額からの繰越控除が認められます。この特例は住宅ローン控除と併用が可能です。ただし、住宅ローン控除と違って毎年確定申告書を提出する必要があります。

合計所得金額が譲渡損失より低い場合(翌年以降は繰越額)は譲渡した年を含み4年間にわたり所得税と住民税が0円になることがあります。

適用要件

  • ◎譲渡する家屋又は土地等が、譲渡した年の1月1日に所有期間が5年を超えていること
  • ◎譲渡年の前年1月1日から譲渡年の翌年12月31日までの間に、自己の居住用家屋(床面積50㎡以上)を取得し、その翌年の12月31日までに居住するもの又は見込みのもの
  • ◎平成29年12月31日までの譲渡
  • ◎譲渡の相手が配偶者や親子など特別な間柄でないこと
  • ◎控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
  • ◎買い換えた資産に係る返済期間10年以上(繰越控除の適用を受ける年の12月31日において)の住宅ローンの残高を有すること譲渡をした年の前年又は前々年に次の特例を受けていないこと
    • 1. この3,000万円控除の特例
    • 2. 居住用財産の買い換え・交換の特例
    • 3. 長期譲渡所得の税額の軽減

特定居住用財産の譲渡損失の繰越控除

住宅ローンが残っている不動産を譲渡して譲渡損失が発生した場合、その譲渡損失の金額のうち譲渡時の住宅ローン残高を超える金額については、買い換えをしなくてもその年に損益通算することができ、控除しきれない金額についても翌年以後3年間に渡って繰越控除することができます。

合計所得金額が譲渡損失より低い場合(翌年以降は繰越額)は譲渡した年を含み4年間にわたり所得税と住民税が0円になることがあります。

控除額

  • 1. (取得費+譲渡費用)-譲渡価格
  • 2. ローン残高-譲渡価格
  • 3. 1、2のいずれか少ない金額

適用要件

  • ◎譲渡する家屋又は土地等が譲渡をした年の1月1日に所有期間が5年を超えていること
  • ◎平成29年12月31日までの譲渡であること
  • ◎譲渡の相手が配偶者や親子など特別な間柄でないこと
  • ◎譲渡契約日の前日においてその建物または土地にかかる住宅ローンが残っていること
  • ◎控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること
  • ◎譲渡をした年の前年又は前々年に次の特例を受けていないこと
    • 1. この3,000万円控除の特例
    • 2. 居住用財産の買い換え・交換の特例
    • 3. 長期譲渡所得の税額の軽減