ワンランクアップの『暮らしを楽しむ』2つのマイルール

『暮らしを楽しむ』2つのマイルール

これまでVMD*として数多くのインテリアショップや雑貨店のディスプレイなどを手がけてきた山川直子さん。昨年末、惜しまれながらもVMDの仕事から離れ、今後はものづくりの世界で活動していくことを決意しました。第二の人生をスタートさせた山川さんにものづくりへの想いや住まい、さらにはコーディネートのコツなどを伺いました。

*ヴィジュアルマーチャンダイジング(視覚的商品化計画)のこと。お客様の購買意欲を喚起するため、商品を見やすく、選びやすく、手に取りやすい方法で売り場環境を整えていく。

写真提供:山川直子さん
INDEX

【1】仕事に追われる中で模索した“第二の人生”

写真提供:山川直子さん

図案家・有田昌史さんがデザインしたオレンジとパープルの色使いが印象的なソファの足元には、ジョージア(グルジア)のカラフルなライオン柄のラグが華やかさを添えています。そのソファの傍らにあるサイドテーブルの上には四季折々の生花が活けられ、室内に彩りと季節感をもたらします。住まい手の審美眼によって上質な物だけが置かれたこの住まいは、VMDとして第一線で活躍してきた山川直子さんとご主人が暮らす住まいです。

昨年末、山川さんは30年以上に渡ってキャリアを築いてきたVMDの仕事を卒業しました。VMDはお店や商品の印象を視覚的にお客様に伝える重要な仕事です。華やかな印象がある一方で、年単位で戦略的に計画を立てていかなくてはいけないので、実際はかなりハードな仕事だといいます。山川さんもVMDの面白さは感じつつも、日々時間に追われていたそうです。

「結婚後、『Francfranc』のVP*を経て、2000年にフリーのVMDになったのですが、忙しすぎて何のために働いているのかと疑問を持つようになりました。特に2005、6年は忙しさもピークで、体力も気力も消耗してしまい、タイミングが来たら子どものころから好きだったものづくりの道に進みたいと思うようになったんです。それでVMDの仕事をしながら、ものづくりの道を模索し始めました」

*ヴィジュアル・プレゼンテーションの略。お客様に商品のイメージやテーマを訴求し、購買意欲につながる売り場やショーウインドウなどのディスプレイを行うこと。

【2】ものづくりの世界でも発揮される抜群のセンス

忙しい仕事の合間をぬって、山川さんはものづくりの基礎を学ぼうと革靴や鎌倉彫、截金(きりかね)の教室に足を運びました。そして、今年から鎌倉彫と截金の2つを軸に、作家としての道を歩み始めました。

写真提供:山川直子さん

鎌倉彫は、陰影のある彫りとしっとりと深みのある漆が絶妙な味わいをもたらす伝統工芸品です。截金は、金箔や銀箔などを熱で数枚重ね、それを竹のカッターで細く切り、筆につけたふのり*1と膠(にかわ)*2を混ぜた糊で接着していくというもの。どちらももともとは仏具から生まれたもので、繊細な技術が求められます。

*1 ふのり:紅藻類フノリ科フノリ属の海藻の一種。古くは天然糊として織物の糊付けや漆喰の材料に使われる。
*2 膠:動物の皮や骨などから抽出したゼラチンが主成分とする物質で、昔から接着剤などに用いられる。

「習い事を始めるときは、自分が一番好きでやってみたいことは何だろうと心の中に問いかけます。鎌倉彫は小中学校の授業であって、私は彫るのがすごく好きだったんです。伝統工芸でもあるし、やってみようと。截金は単純にその美しさに惹かれました。実際に始めてみたら、かなりハードルが高いこともわかりました」

写真提供:山川直子さん

鎌倉彫は、デザインや彫りを山川さんが行い、仕上げの漆塗りを「塗師」に託します。制作に時間もコストもかかるため、オーダーを受けてから生産する「受注生産」方式を採用。一方、截金はもっと気軽に楽しめるようにと、これまた山川さんが大好きな石と古い切手を組み合わせたオブジェに施したり、1960~70年代に『千趣会』から発売されたロイヤルペットに施してアップサイクルオブジェとして販売する予定だといいます。これらは多くの物を見てきた山川さんだからできることで、VMDで培ったセンスがものづくりの世界にも大いに発揮されています。

【3】好きな色や物に囲まれて暮らす幸せ

VMDの経験は住まいのあちこちにも。たとえば、室内に飾る花やテキスタイルは季節感を重視していたり、食器棚の食器は使う頻度の高い物を手前にしたり、本棚はジャンルごとに本や雑誌を納めるなど、「色の効果」や「手に取りやすさ」「見つけやすさ」といったVMDの基本が存分に活かされています。

その中でも特にセンスが光るのがテキスタイルです。山川さんの「好き」という直感で集められた、さまざまな国のテキスタイルが絶妙なバランスでミックスされており、ワクワクするような雰囲気を醸し出しています。そのコーディネートのコツは、スタイルやテイストにこだわり過ぎず、 “好き”を追求することだそう。そのためにいろいろと試してみることも大切で、そこからベストな組み合わせも見つかってくるといいます。

写真提供:山川直子さん

「ほかにも玄関やトイレなどは好きな小物をディスプレイしたり。寒さを感じやすいバスルームや洗面所などは、温かみのある色の壁紙や塗料、タイルなどを取り入れています。リビングの壁はどんな色や柄にも合わせやすいグレージュ色に塗り、好きな家具や小物を置いて楽しんでいます。私のコーディネートの基本は、好きな色や物に囲まれて暮らすということです」

そんな山川さんが住まいの中でこだわっているルールは2つ。それは「好きにこだわる」「花や緑を絶やさない」ことだそう。第2回ではその2つのルールについて詳しくお話を伺います。

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●プロフィール:山川直子さん
武蔵野美術大学短期大学部 空間演出デザイン科を卒業後、(株)東京ソワール、(株)バルスのVP(ビジュアル・プレゼンテーション)を経て、2000年10月より主にホームファニシングのVMDを軸にフリーランスで活動をスタート。さまざまなメーカーやショップなどのVMDに携わるだけでなく、VMDをベースとした店舗演出や雑貨&インテリアのスタイリング、デコレーターとしても活躍。2021年12月末にVMDを卒業し、鎌倉彫や截金を中心としたものづくりと一般の方のお部屋コーディネートの提案も手がける。

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●執筆・編集:石倉 夏枝(編集・ライター)さん

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