第5回

二世帯住宅と賃貸併用住宅を活用する

自宅の敷地を有効活用し、親世帯と子世帯が同居する二世帯住宅。親の老後を考えての同居や、共働きの子世帯を親世帯が家事・育児で協力する為の同居が増えており、二世帯住宅を検討する方が増えています。二世帯住宅とすることで親世帯と子世帯の生活面での協力が可能になりますが、孫世帯へ引き継がれていくことを考えると、相続が発生した場合や将来の活用法も踏まえて検討する必要があります。

ここがポイント
  • 二世帯住宅を建てる場合は相続が発生した場合と将来の活用法も考える
  • 二世帯住宅の共有は争族にならないよう注意が必要
  • 賃貸併用住宅を活用して税制メリットを得る

1.二世帯住宅は相続と将来の活用を考える

自宅の敷地に二世帯住宅を建てると、例えば長男夫婦が同居し、配偶者以外が自宅敷地を相続する場合でも相続税評価額を下げることができます。小規模宅地等の特例が適用されるからですが、平成26年1月からは一棟の二世帯住宅で構造上分離している場合でも、親子の共有名義で登記をしていれば同特例が適用されるようになりました。構造上完全に分離していれば、将来的にいずれか一方を賃貸住宅にするなど、フレキシブルな対応が可能になります。生活を分離するだけではなく、賃貸化を想定するなら電気やガスなどメーターの分離、遮音対策やプライバシーの確保、生活導線を分けるなどの配慮が設計段階から必要になります。二世帯住宅の建築を考えたら、節税面だけでなく、あらかじめ将来の活用の仕方を予測しておくことも欠かせません。

[図1 二世帯住宅の活用メリット]

2.争族にならないように

相続財産が自宅のみ且つ二世帯住宅という場合によく起こる問題があります。自宅を複数の相続人で共有した場合に発生する可能性が高く、争族に発展するケースも少なくありません。例えば自宅敷地を姉と弟2人が相続時に1/2ずつ共有した場合をみてみます。弟が自宅に居住している一方、姉はほかに自宅があって利用上のメリットがない場合などです。将来的に姉に現金が必要になった場合、共有部分を分割するよう請求をすることができます。そうすると、弟は住み続けたい場合には姉の持ち分の1/2を買い取るしかありません。もし現金がなかったら、売却して姉に現金を渡さなければなりません。このような事態にならないよう、相続発生以前から、親子・兄弟姉妹間で財産分割の方法を話し合っておくことが大切です。

[図2 二世帯住宅の場合、相続財産が自宅敷地だけなら争族対策を]

3.賃貸併用の節税効果 世田谷区の場合

二世帯住宅に賃貸部分をプラスし、賃貸併用住宅に転用することも可能です。世田谷区のように地価の高いエリアでは、土地を有効に活用することで家賃収入を得る一方で、賃貸併用住宅の税制面のメリットを活用し、節税対策を考えることができます。自宅の敷地は、小規模宅地等の特例が適用されると最大330㎡まで8割の評価減になります。一方で賃貸部分の敷地は、貸家建付地となって2割程度の評価減となり、さらに相続人が事業を続ける場合、最大200㎡まで5割の評価減になります。建物についても、賃貸部分は貸家の評価額となって自宅の評価額から約3割の評価減額となります。このように、賃貸併用住宅は土地と建物の双方に賃貸部分の評価額が減額されるため、自宅のみの場合と比較して相続税評価額を下げることができます。将来、小規模宅地等の特例が適用されない場合、賃貸併用住宅を活用して賃貸部分の敷地の評価を下げることも有利な選択肢の一つといえます。

[図3 小規模宅地等の特例による評価減]

※相続対策はお客様の状況により異なる場合がございます。二世帯住宅や賃貸併用住宅をお考えの際は、駒沢公園ハウジングギャラリー内のハウスメーカーにてご相談ください。

筆者:平澤 朋樹(ファイナンシャルプランナーCFP®
平澤FP事務所 代表
金融機関に所属しない独立系のファイナンシャルプランナー事務所を運営。子育て世帯向けの住宅資金計画や住宅ローン選びのほか、生活設計や資産形成を中心とした相談、セミナー、執筆等を行っている。金融・経済の知識や豊富な投資経験に基づく資産運用の相談も好評。
資格:ファイナンシャルプランナー(CFP®)、住宅ローンアドバイザー

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