モダンリビング・コラム
下田結花の
「心地よさのつくり方」

<掲載>モダンリビング
設計/ 森山善之+荻野志保美(建築設計事務所バケラッタ)
撮影/下村康典

椅子と緑で「過ごすための庭」をつくろう

 暑くもなく、寒くもなく、湿度も低く、爽やかな風が吹く5月の東京は、本当に心地よい季節です。梅雨入りまでの短い期間ですが、それだけにとても貴重です。私はこの季節になると、1日に一度は外で過ごしたくなります。アウトドアでは、原稿書きやメールチェックといった仕事も室内よりずっとストレスが少なく、気持ちよくできるからです。そして、外で食べるご飯の美味しいこと! シンプルなものでも、特別に感じられるのはなぜでしょう? 風と光がスパイスになるからかもしれませんね。屋外にテーブルがあるカフェやレストランもいいのですが、自宅の庭なら手軽にいつでも外ご飯が可能です。

 「庭」というと、大掛かりなものを想像するかもしれません。けれど、小さな中庭やテラスも立派な庭。マンションのベランダも、つくり方次第で十分庭になります。かつて庭は「眺める」ためのものでしたが、今、欲しいのは「過ごすための庭」です。朝のコーヒー、読書、お昼ご飯、そしてお茶をしてぼーっとするーそんな時間を過ごすためのいちばん気持ちいい場所。それが「庭」なのです。

 では、そんな庭はどうやって作ったらいいのでしょうか? まずは、椅子を一脚とグリーンの鉢植えやハーブを一緒に置いてみましょう。屋外家具だけでも、緑だけでもダメなのです。両方あって初めて、そこで過ごしたいという気持ちになるもの。椅子と鉢植えくらいなら、小さなベランダでもすぐに実現可能です。庭はいわば、「天井のないもう一つの部屋」。そこで飲む一杯のビールやお茶の時間は、あなたの暮らしを確実に豊かに変えてくれることでしょう。

下田結花(モダンリビング・パブリッシャー)