第22回

住宅ローン減税の控除期間が13年に延長
2019年住宅購入に関する税制改正のまとめ

2019年に行われる税制改正の中では住宅ローン減税の改正が住宅購入には大きな影響を与えます。消費税10%で住宅を購入する人のみですが控除期間が3年延長になります。今回は住宅ローン減税の改正点をまとめ、併せて住宅購入に関連するその他の税制改正や、新設される次世代住宅ポイント他、住宅購入支援制度の改正についても解説します。

ここがポイント
  • 2019年税制改正で住宅ローン減税の控除期間が3年延長されることが決定。
  • 空き家に係る譲渡所得の特別控除の延長等も決定。
  • 次世代住宅ポイントが新設、すまい給付金、住宅取得等資金の贈与税非課税制度は増税後、有利に。

1.住宅ローン減税の改正で控除期間が10年から13年に延長

2019年の税制改正で住宅ローン減税の改正が行われます。現在の住宅ローン減税は、毎年末の住宅ローン残高の1%を10年間、所得税から控除できる(控除しきれない分は一部、翌年の住民税からも控除できる)制度です。
今回の税制改正により消費税10%が適用される住宅を購入する場合、控除期間が10年ではなく13年になります。延長された3年間の1年あたりの控除限度額は「住宅ローン残高の1%相当額」と「建物価格の2%÷3」のうち小さい額まで、となります(「建物価格」については長期優良住宅等の場合5,000万円、一般住宅の場合4,000万円が限度)。この3年間の延長は2020年12月末までに入居した人が対象となります。

「建物価格の2%」というのは消費税8%と10%の差を意味します。今回の増税で負担は増えるが、それを11年目~13年目の3年間の住宅ローン減税でカバーしましょう、という意図があります。

ここで例として年収750万円、住宅ローンの金額を6,000万円、建物価格4,000万円と仮定した場合の住宅ローン減税について考えます(住宅ローンの返済期間は35年、元利均等返済、金利は0.625%で変化なし、収入も変化なしと仮定します)。11年目~13年目の控除額は「建物価格×2%÷3」(約266,700円)となります(グラフの赤色で示した部分)

消費税10%時の住宅ローン減税の控除額

消費税10%時の住宅ローン減税の控除額

なお住宅ローン減税の1年あたりの最大控除額は長期優良住宅等の場合50万円(一般住宅の場合40万円まで)になります。また所得税では実際に払っている税額以上の控除は受けられず、住民税からは課税所得金額の7%(最大136,500円)までしか控除が受けられないという点にも注意しておきましょう。

2.空き家に係る譲渡所得の特別控除も延長

住宅ローン減税の改正以外では、住宅購入に関係があるものとして、以下2つの制度で期間の延長が決定しました。
まず1つ目は「空き家に係る譲渡所得の特別控除」の延長です。相続で古い空き家を取得した人がそれを売却し利益が出た場合、税額計算時に譲渡所得から3,000万円を引くことができるという制度があります。相続した空き家(昭和56年5月31日以前に建てられた古い住宅)を、耐震基準を満たした状態(耐震リフォームを行う等)で売却するか、更地にしてから売却する場合にこの制度は利用できます。売却の期限は2019年12月末までとされていましたが2023年12月末まで4年間延長されます。

また、今までは被相続人(例:亡くなった親等)が老人ホームに入所していた場合、この制度の対象外でしたが、今回の税制改正では亡くなる直前まで老人ホームに入所していた場合でも本制度が利用できることになりました。
期間が延長される2つ目の制度は「土地の売買による所有権移転登記に対する登録免許税の税率の軽減措置」です。土地の売買による移転登記では登録免許税の税率が本来の2%から1.5%に引き下げられていますが、この軽減措置は2021年3月末まで2年間延長されます。

3.次世代住宅ポイントが新設、すまい給付金、住宅取得等資金の贈与税非課税制度は増税後に有利に

税制の改正ではありませんが「次世代住宅ポイント」という制度が新たに作られることになりました。これは一定の性能を持つ住宅を、消費税10%で購入する場合に最大で35万円相当のポイントが受け取れるというものです。

次世代住宅ポイント

次世代住宅ポイント

次世代住宅ポイントは今のところ2020年3月までに請負契約をした人等が対象とされています。住宅購入者が利用できる制度はその他にも様々なものがありますが、消費税増税に伴い、すまい給付金と住宅取得等資金の贈与税非課税制度については拡充される予定です。(今回の税制改正が発表される前から決まっていた改正です)。
すまい給付金は住宅を購入すると一定額の給付金を受け取れるものです(ただし年収に制限があります)。増税後は以下のように給付金の最大金額や、対象となる年収の目安が拡充されます。

すまい給付金

すまい給付金
  • ※政令指定都市の場合や、神奈川県の場合は所得割額が他の都道府県と異なります(年収の目安は同じです)。

住宅取得等資金の贈与税非課税制度

住宅取得等資金の贈与税非課税制度
  • ※贈与税には元々110万円の非課税枠があるため、上記数値に110万円を足した金額まで、贈与税は非課税になります。

住宅ローン減税他、今回解説した各制度の詳細については駒沢公園ハウジングギャラリーにてハウスメーカーに確認してみましょう。

※税制改正についての記述は2018年12月に発表された「税制改正大綱」の内容に基づき、その他に関しては2019年2月5日時点の情報に基づいています。

監修・情報提供:井上光章 (ファイナンシャルプランナーCFP®

株式会社FPアルトゥル代表取締役。
独立系FPとして、住宅購入時の資金計画や住宅ローンのコンサルティング、相続、資産運用のコンサルティングを主な業務として行う。豊富な相談実績を基にした、マイホーム購入時の資金計画や住宅ローンで失敗しない秘訣をお伝えします。

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