第31回
住宅を新築するなら
災害対策も
災害に備える家づくり
住宅購入に際しては災害に備えるという観点も大切です。耐震性や耐火性も重要ですが、近年、地球の温暖化が進んだ影響からか、台風や豪雨の被害が相次いでいます。風水害、土砂災害の発生リスクについてもきちんと考えておく必要があるでしょう。
- 省エネ設備は、台風、豪雨等でライフラインが止まった時の備えになるものもある
- 住宅購入時には耐震性や防火性についても確認しておくと安心
- エネファームや蓄電池には補助金が利用できる
1.台風、大雨から守る家
住宅を購入する際は、風水害、土砂災害に備えることを考えておきたいところ。土地を購入する際、ハザードマップで安全を確認するといった対策だけでなく、住宅自体も災害に強いものにしていく必要があるといえます。
●台風に備える
たとえば台風などの風の被害に備えるという意味では、瓦を強靭なものにする、割れにくい窓ガラスにする(防犯にもなる)、割れても破片が飛び散らない窓ガラスにする(専用のフィルムを貼る等)、雨戸やシャッターをできるだけつけるといった対策が考えられます。
●停電に備える
停電に備える、という意味では、まず太陽光発電システムやエネファームなど、電気を創る設備を導入し、さらに蓄電池システムで創った電気を蓄えるという対策が考えられます。
※エネファーム:ガスから取り出した水素と空気中の酸素を化学反応させて発電し、このとき発生する熱を給湯にも使う設備。
V2H(ヴィークルトゥホーム)システムを導入すると、停電時に電気自動車に貯めてある電気を自宅に送ることができます。V2Hシステムと太陽光発電とを組み合わせることで、昼間は太陽光発電で電気自動車に電力を貯め、貯めた電力を夜間に使うことができます。
●断水に備える
断水に備えるという意味では、雨水タンクを導入し屋根の雨といから雨水を集めて貯めることが対策になります。普段はガーデニング用や掃除用などに利用する人が多いですが、断水時にはトイレ用の水などにも利用できます。パントリーや床下収納などを作っておき、ペットボトルの水などをストックしておくことも断水対策になるでしょう。
なお、太陽光発電システムやエネファーム、蓄電池システム、V2Hシステム、雨水タンクなどは省エネにも役立つ設備です。設置時にはお金がかかりますが、その後の光熱費は安くなりますし、今回解説したように災害対策にも活用できます。これらの点を考慮して導入するかどうかを検討するようにしましょう。後述するように補助金が使える場合もあります。
2.地震や火災から守る家
災害に備えるということでは、地震や火事についても備えた住宅が安心できます。
●地震に備える
地震については、一定の耐震性をクリアしておくと安心です。耐震性の指標として用いられているのが耐震等級です(図表1)。「長期優良住宅」の認定基準のひとつに「耐震性」があり、耐震等級2以上が認定の条件となりますが、多くのハウスメーカーでは標準仕様で耐震等級2以上の性能にしています。耐震等級が高い住宅は、地震保険の保険料が安くなるというメリットもあります。
なお旧耐震基準(1981(昭和56)年5月31日までの建築確認において適用されていた基準)の古い住宅に住んでいる場合は、耐震性能の診断を受け、基準を満たしていないのであればそれを建替えて直すか、耐震リフォームを行うなどの対策をしておく方が安心できるでしょう。
●火災に備える
火災から守るという点では、住宅を耐火構造、準耐火構造、省令準耐火構造にするということが考えられます。火災保険料、地震保険料が安くなるというメリットがあります。なお、省令準耐火構造は、外部からの延焼防止(屋根は不燃材料で葺くなど)・各室防火(天井・壁にせっこうボードを敷くなど)・他の部屋への延焼遅延(ファイヤーストップ材の採用など)という3つの対策がなされた建物のことです(建築基準法で定められたものではなく、住宅金融支援機構がその基準を定めています)。
3.エネファームや蓄電池等には補助金も
今回まとめた設備等に対しては、国や自治体から助成を受けられる場合もあります。図表2に一例を紹介します。
各補助金とも対象設備等に条件があるので、ホームページ等で確認するかハウスメーカーに相談してみることをおすすめします。なおこれらの補助金は予算に達し次第、早期に締め切られる可能性もあります。
上記のような設備への補助金以外では、たとえば世田谷区では旧耐震基準の住宅をリフォームする場合や建て替えした場合に補助金などの助成があります(耐震性能の無料診断や、耐震リフォームに最大100万円の補助金など)。
また世田谷区では旧耐震時代に建てられた住宅で現在の耐震基準を満たしていない住宅を除却(解体)した場合には最大50万円の補助金が利用できます。除却後に新たに住宅を建てる場合は、フラット35の地域活性化型金利引下げ(5年間、0.25%の引き下げ)も利用できます。
今回は、災害に備える家づくりについてまとめました。補助金に関しては、新たな補助金やその他の助成制度が設けられる可能性もあります。駒沢公園ハウジングギャラリーにてハウスメーカーに最新情報を確認してみましょう。
※2020年11月20日時点の情報に基づいています。各制度の詳細は、ご計画前に最新の情報をご確認ください。
監修・情報提供:井上光章 (ファイナンシャルプランナーCFP®)
株式会社FPアルトゥル代表取締役。
独立系FPとして、住宅購入時の資金計画や住宅ローンのコンサルティング、相続、資産運用のコンサルティングを主な業務として行う。豊富な相談実績を基にした、マイホーム購入時の資金計画や住宅ローンで失敗しない秘訣をお伝えします。
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