第38回

2022年世田谷区の
最新不動産市況

住宅の購入や建築を考えるとき、不動産価格の動向は気になるものです。どうせ建てるなら価値の高いもしくは、これから価値が上がりそうなエリアにしたいと考える方も多いのでは?しかし、不動産情報を調べても現在の価格は確認できますが、将来的にどうなるなどの具体的な市場動向はつかみ難いものです。
今回は最新(2021年9月発表)の基準地価格の情報をもとに、世田谷区の不動産動向とその世田谷区で建築する場合に、資産価値を高める家づくりのポイントについてご紹介します。

ここがポイント
  • 都区部の住宅地は0.5%プラスを維持。世田谷区の住宅地は0.1%プラスとほぼ横ばい
  • 都区部の下落率ワースト10がすべて世田谷区の基準地であった(45地点中14地点が▲)
  • 世田谷区で資産価値を上げる家づくりの秘訣は、二世帯住宅や賃貸併用住宅のように、ひとつの建物に自分以外の世帯が居住できる空間を設けること

1.2022年以降不動産価格はどうなる?

 2021年7月1日時点の東京都の基準地価格(※)が、同年9月22日付で告示されました。東京都全域では住宅地および工業地における対前年平均変動率は9年連続でプラス(上昇)を維持しましたが、商業地は9年ぶりにマイナス(下落)となりました。

(図表1)世田谷区と都区部の基準地価価格の変動率の推移(出典:平成30年~令和3年東京都基準地価格の概要)

都区部(東京23区)の住宅地の変動率の推移は、2021年は0.5%のプラスを維持しました(図表1)。しかしながら、2018年4.3%、2019年4.6%に比べて、変動率はかなり小幅に落ち着いています。これに対して商業地は、2021年は▲0.3%と下落しており、大幅に上昇した2018年7.2%、2019年8.4%に比べて、落ち込んでしまいました。2018年と2019年の上昇は、アベノミクスで市場に流れた資金が不動産に集まったことによる効果ですが、2021年の下落は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響です。

世田谷区を見ると、住宅地の変動率は2021年が0.1%のプラスとほぼ横ばいでした。商業地も都区部のように下落はしませんでしたが、2021年は0.4%とこれもほぼ横ばいでした。過去3年との比較では、都区部の変動率ほどの差異はありませんが、同様の変動がありました。

※基準地価格:国土利用計画法施行令第9条の規定に基づいて、知事が毎年7月1日時点の基準地の標準価格(基準地価格)を判定しているもの。地価公示は、地価公示法第2条第1項に基づいて、国土交通省の土地鑑定委員会が地域の標準的な地点を選定し、毎年1月1日時点の正常な価格を公表するもの。

(図表2)令和3年地価調査 基準地下落率順位一覧表(住宅地)(出典:令和3年東京都基準地価格の概要)

(図表3)都区部住宅地の変動率分布図の比較(出典:令和元年・令和3年東京都基準地価格 参考資料)

世田谷区内の基準地価格を詳細にみると、驚いたことに2021年地価調査における都区部基準地の下落率ワースト10がすべて世田谷区の基準地であったことです(図表2)。都区部住宅地の2021年の変動率分布図をみてみると、2021年では基準地の45地点のうち都区部では最も多い14地点が下落していました(図表3)。最も下落率の高い基準値は岡本三丁目の▲2.0%でした。
この鑑定評価の決定理由をみると、「最寄駅からやや距離があり、賃貸アパート等においては土地の経済価値に見合う賃料収入が必ずしも得られないことにより、低く算定された」と記載がありました。この地籍が245㎡ありましたので、一戸建てとしての需要以外(賃貸など)の観点も考慮されたものと考えます。

2022年以降の不動産価格は、いままでのアベノミクスによる上昇基調に対して、新型コロナウィスル感染拡大による経済への影響、建設資材の高騰、アベノミクス(特に金融政策)の見直しなどにより、しばらくは上げ幅が抑制され、過去の上昇分について再確認のうえ調整されるものと考えます。

それでも、世田谷区の不動産価格は、大きな変化はなく現状の基準値価格を維持するのではないでしょうか。

2.資産価値を上げる家づくりの秘訣

持ち家における一住宅当たりの延べ床面積は、世田谷区が99.88㎡と都区部で最も大きい面積でした(東京都統計年鑑調べ)。一つの建物の敷地が広いことが要因です。世田谷区で資産価値を上げる家づくりの秘訣は、二世帯住宅や賃貸併用住宅(表4)のように、ひとつの建物に自分以外の世帯が居住できる空間を設けることです。そうすることで、将来の家族構成の変化に対応して、二世帯住宅であれば親世代の居室を賃貸することも、賃貸併用の居室を成長した子どもの居室にするなど活用の選択肢が増え、将来も見据えて家づくりを計画することが可能となります。

延べ床面積が広ければ、親世帯と子世帯が互いの生活時間の違いを気にすることなく快適に暮らせる完全分離型の二世帯住宅にすることもできます。親名義の土地に二世帯住宅を建設すれば、親の相続時に小規模宅地等の特例が適用できることが多く、土地の評価額を大幅に圧縮して相続税の減額が可能となります。また、特例の利用を前提に考えれば、土地の相続人が同居の親族などに特定されますので、次世代への資産の承継がスムーズに実施できるきっかけにもなります。

(図表4)賃貸併用住宅のメリットや建て方

自宅の一部を賃貸住宅にする賃貸併用住宅は、賃貸住宅部分も住宅ローンの低金利を利用しながら建設できることが大きなメリットです。低金利による返済額の低減に加えて、世田谷区であれば人気のエリアなため賃貸需要も多く賃料の坪単価が比較的高く設定できますので、得られる賃料収入で自宅部分のローン返済も補うことが可能です。

二世帯住宅も賃貸併用住宅も一般の戸建に比べ、住宅設備が世帯数の分だけ増えて建築費が嵩みます。また道路・建物のアプローチや、建物内部の部屋の配置など検討事項も多くなります。賃貸住宅は、長期に安定して賃貸を継続することがとても重要です。
その為には、地域のニーズにあった間取りを取り入れることも大切ですし、収支シミュレーションをしっかり確認して建てた後の管理やリスクに関してもしっかり計画を進めることが必要です。

世田谷区での家づくりは、まず駒沢公園ハウスジングギャラリーなどのモデルハウスを見学しながら、早い段階からハウスメーカーの担当者に相談することをおすすめします。

※ 2022年1月20日(木)時点の情報に基づいています。

執筆・情報提供:安食 正秀 (宅地建物取引主任者 相続アドバイザー協議会R認定会員 上級アドバイザー)

1963年東京生まれ、立教大学経済学部卒。
2006年7月、株式会社アセット・アドバイザーを設立。財産を次世代に承継することを最優先に、顧客の不動産の全体像を把握し、様々な視点から不動産の相続対策の立案、問題解決および実務支援を行う。夕刊フジで「激変!相続税に備える」を連載。2016年1月千葉テレビに出演。首都圏を中心にセミナーや執筆など人気講師として活躍中。

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