相続対策と不動産活用
第6回
相続税対策(総額を減らす・特例を使う・基礎控除を増やす)
~相続税対策と相続対策は別もの~

【1】はじめに
相続税の計算方法については、第2回で取上げました。プラスの財産(預貯金、有価証券、不動産など)からマイナスの財産(借入金、未払金など)と葬儀費用を差引いた正味の財産から基礎控除を差引いた残額が課税の対象となりますので、正味の財産が基礎控除以下であれば相続税はかからないことになります。
今回のコラムは、相続「税」対策について解説します。なお、相続対策については次回に取上げる予定です。
【2】具体的な相続税対策
相続税対策とは税額をいかにして合法的に小さくしていくか、言換えますと正味の財産の額を小さくすること、ということになります。ですので、究極の相続税対策は財産を亡くなるまでに大方(基礎控除以下まで)使ってしまう、ということになるかもしれませんが、死亡はいつ起こるか分かりませんので、計画的にというわけにいかないでしょう。
相続税対策を大きく、(1)資産を組換える、(2)生前に資産を移転させる、(3)分割方法を工夫する、3つの区分に分けて説明していきます。
[2-1]資産の組換え
資産、特に現金預金を別の資産に組換えるということですが、主に行われるのが不動産に換えるという方法です。不動産の評価方法については第3回のコラムで説明しましたとおり、実際の時価よりも低く評価されることを利用します。ただし、不動産の場合は複数の相続人で相続した場合、共有となります。一般的に不動産の共有は争いの元になると考えられています。どのように相続人へ引継ぐのかを事前に検討をしておくことをお勧めします。
2つ目は、生命保険を使うという方法です。被相続人が契約者で保険料の負担をしていた生命保険の保険金を遺族が受取る場合は、その保険金について「500万円×法定相続人の数」まで非課税となります。つまり、現金預金は相続税の計算の対象となりその額面が評価額となりますが、一時払いなどで保険に換えておけば、その分は非課税となり評価の対象外となります。
3つ目の方法は、法人化です。不動産を個人で所有している場合、その個人が亡くなると相続の対象となりますが、法人が所有している場合にはその不動産は法人に帰属しますので、相続の対象外とすることができます。ただし、被相続人がその法人の株式を所有している場合はその株式は相続の対象となりますので、法人設立の際、だれが株主(出資者)になるのかの検討が必要です。
[2-2]生前に資産を移転する
財産を使うというわけではありませんが、贈与という方法により自分から子供や孫へ資産を移転させることによって、自分の財産を減少させる方法です。基本的には暦年贈与と相続時精算贈与ですが、年齢、状況等の要件を満たす方であれば、教育資金贈与、結婚子育て贈与、住宅取得等資金贈与といった特例も選択肢になります。
2025年6月に掲載しましたコラム「贈与税を受けるときのお得な制度 2025年最新! 住宅購入前に知っておきたい、贈与を受ける時のお得な制度とは」も合わせてご参照下さい。
なお、暦年課税は税制改正により2024年1月以降の贈与については持戻しの期間が7年となりました。持ち戻しの対象は相続財産を取得した方ですので、相続人とならない孫への贈与も方法の1つとなるでしょう。
また、通称「おしどり贈与」と言われている贈与税の配偶者控除も非課税で贈与ができる制度です。婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産や居住用不動産の取得資金を贈与した場合、2,000万円まで非課税となります。例えば、夫が所有する自宅とその敷地の持分の一部を妻に贈与する、ということです。2,000万円分の財産が夫から妻へ移転しますので、夫の財産がその分減少します。妻は贈与により不動産を取得していますので、登録免許税、不動産取得税は課税されます。またその税率は相続での取得よりも高くなりますのでご注意下さい。
[2-3]分割方法を工夫する~特例を使う
相続税の特例を使うことによって評価額を下げる(小規模宅地等の特例)又は税額を軽減する(配偶者の税額軽減)方法です。これらの特例は誰が相続するかが関わってきますので、分割方法が重要となります。
11月掲載の第5回「相続税の特例(小規模宅地等の特例と配偶者の税額軽減)を活用する」をご参照下さい。
【3】基礎控除額を増やす
基礎控除額が大きくなれば課税遺産額はその分小さくなります。よって税額も小さくなります。基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されますので、法定相続人の数が増えれば基礎控除額も増えるということですが、実際に子供を増やすというのは現実的ではありません。一般的には孫を養子にするという方法が取られています。ただし、税法上、子供がいる場合の養子は1人、居ない場合が2人と制限されています。
また、相続税の計算では、一旦法定相続割合で分けるという過程がありますので、法定相続人の数が増えると計算上の1人当たりの金額が小さくなり適用する税率が低くなる可能性も出てきます。ただし、孫を養子とした場合にはその相続税額が2割加算されますのでご注意下さい。
【4】終わりに
相続税の計算は相続発生時(死亡した日)の財産、状況によって行われます。従いまして対策はそれ以前に行っておく必要があります。分け方によって相続税額が変わってくることもありますので、相続税額を下げたい相続税対策とどのように分割するかという相続対策は切り離せないものでもあります。
分割についてと争いごとについての対策は、次回(第7回)の、「遺産分割協議~争族にならないために~」で解説します。
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