相続対策と不動産活用

第7回
「遺産分割協議」
~争族にならないために~

INDEX

【1】はじめに

 前回のコラムで相続「税」対策を取り上げました。今回のコラムでは相続対策、遺産の分け方について取り上げます。俗に言われる「争族」、遺産分割の過程において親族間でもめる原因と対策について解説します。

【2】争族は割と身近にある

 「争族」はテレビドラマや小説で取り上げられるようなお金持ちに限ったことではありません。表1をご覧下さい。この表は遺産分割事件(新受件数は13,872件)のうち認容・調停が成立した件数を遺産価額別にまとめたものです。遺産が5,000万円以下の相続が全体の4分の3を占めています。決してお金持ちだけのお話でなく、普通の家庭で起きていることが分かります。また、表2は審理期間を示したものですが、審理期間も1年以内が33.0%、2年以が23.0%と、年単位での時間がかかっています。もめると時間がかかるのです。

【3】遺産分割協議について

 人が亡くなると、その亡くなった方の財産が法律に沿って引き継がれていきます。その基本的なルールは、
①遺言書があれば、その内容に沿って遺産を分ける
②遺言書が無い場合は、共同相続人全員で,相続分にしたがって,具体的に「誰が」「何を」「どのように」相続して取得するかを話し合って,遺産を振り分け,所有を確定します。これを遺産分割協議と言います。協議して合意した内容を記載した書面を遺産分割協議書と言います。署名をして実印で押印します。この遺産分割協議書を使って不動産の登記の変更、預金の移動などを行いますので、とても重要な書面になります。 
③分割は相続人間の話し合いで決着するのが理想ですが、折り合いがつかない場合は法的な手段を取ることになります。遺産分割調停(裁判所を交えて話し合い)や遺産分割審判(裁判所が決める)などです。

【4】遺言書があれば争族は起こらない?

 「争族とならないように、遺言書を書きましょう!」、こんなキャッチ・コピーを聞いたとはありませんか。遺言書があれば、本当に争いを避けることができるのでしょうか。
 では、なぜ相続で争うのでしょう。例えば、資産に占める不動産の割合が高い、自社の株式を保有しているなど資産に関して問題がある、家族の仲が良くないなど家族関係に問題がある、ということがその理由と考えられます。
 これらの争いを避けるために遺言書が推奨されるですが、遺言書さえあれば、本当に争族を避けることができるのでしょうか。
 遺言書を書くということは、話し合いに任せておけない、という家族の事情だけでなく、特定の相続人に遺産を多く残したい、孫など推定相続人以外に遺産を残したい、などのように遺言者自身の思いを確実に実行させたなどの理由があるはずです。一方で相続人からしますと、遺言書があるということは、これによって多く取得できる相続人と少なく相続する相続人も出てくることを意味します。遺言書があることによって嬉しい相続人と嬉しくない相続人が出てくるのです。遺言書を作成する際にはこのような点にも配慮して、付言事項にその思いを記すなども良い方法かと思います。

【5】遺言書の種類

自筆証書遺言書…すべて(全文、日付、氏名)を自分で作成する。「自筆」ですからパソコンなどの作成は認められません。

公正証書遺言…公証人役場で作成、保管する。証人2人の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言内容を説明し、公証人が書面化して読み聞かせ、遺言者と証人がその内容が正確であることを確認し署名・押印する。

秘密遺言書…遺言の内容を誰にも知られたくないという場合に作成する。

遺言書保管制度…法務局で自筆証書遺言書を管理・保管。
⇒紛失、破棄、改ざん等の防止
⇒家庭裁判所の検認が不要

【6】遺留分侵害額請求について

 遺言書を作成する場合でも、遺留分に配慮した内容にしましょう。遺留分とは兄弟姉妹以外の法定相続人に認められる最低限の相続権です。遺留分を侵害する内容の遺言書であっても遺言書自体は有効ですが、遺留分が侵害されている分に対して請求されることになります。
 従って、可能な限り遺留分を侵害しない内容とすることが望ましいのですが、遺留分を侵害することとなった場合でも、付言事項にその思いなどを記載することにより相続人の不満を和らげることができるかもしれません。

【7】ケーススタディ

[7-1]主な財産が自宅の土地と建物の場合

(問題点)土地や建物は分割することが難しい財産です。土地や建物を取得する相続人と他の相続人間で、遺産の取得額に大きな差が出ます。
(解決方法)土地や家屋を取得しない相続人のために現金預金を用意する。又は、生命保険を活用する。

[7-2]被相続人が会社の経営で株式を保有していて、特定の相続人(例えば長男)に事業を引き継いでもらいたい場合

(問題点)会社の株式が相続によって分散することは避けたい。会社の価値(株価)が高い場合には、相続人間で遺産の取得額に大きな差が出ます。
(解決方法)株式を取得しない相続人のために現金預金を用意する。又は、生命保険を活用する。どうしても他の相続人にも分割しなければならない場合は、一旦他の相続人も株式を取得し、会社がその株式を買い取る。

[7-3]特定の相続人が生前贈与を受けていた場合

(問題点)特定の相続人が生前贈与を受けていた場合で、その生前贈与を考慮しないで分割すると、取得額が不公平となる確率は高くなります。
(解決方法)生前贈与の事実は親族間で共有する。

[7-4]特定の相続人又は相続人の家族が被相続人の介護をしていた場合

(問題点)介護してきたことをどう評価するかがとても難しい。他の親族が介護の苦労を評価しない。
(解決方法)生命保険金の受取人に指定する。遺言書を書く。

【8】争族とならないためには

 相続でもめる原因は、遺産の多寡だけではないでしょう。家族間、親族間が疎遠であったり、コミュニケーションがうまくとれていないなどで関係が良くない場合には分割の際にトラブルになる可能性が高くなると言えそうです。 そうならないために生前の話し合いが重要です。できれば関係者全員で話し合いができれば理想的です。分割が難しい不動産が遺産に含まれている場合にはなおさらです。相続、遺産分割は非常にデリケート話題ですが、タブー視しないで、考えや思いを親族に伝えておくことも必要でしょう。相続が発生してからでは対策をとることができません。事前の準備が大切です。

【9】誰が言い出すのか

 往々にして相続の話を持ち出した方(言い出しっぺ)が悪者扱いにされるようです。そういう話を良く耳にします。確かに相続、遺産分割は人の死と隣り合わせですから、言われる本人にとっては気持ちの良いものではありません。まるで早くあの世へ行って欲しい、というようにも聞こえるのでしょうか。しかし、できれば元気で意志をしっかりと示すことができる間に話し合いをすることはとても大事ですし、それを言い出した方は、私はとっても良いことをしていると思います。

【10】終わりに

次回(第8回)は、引き続き財産の分割に関わる「一次相続と二次相続」について解説します。

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執筆・情報提供:本間慶喜(税理士)

本間慶喜税理士事務所所長。成城大学法学部法律学科卒業。国士舘大学大学院経済学研究科卒業。英国留学を経て、外国為替仲介業として、東京および海外市場でデリバティブの取引に従事。保有資格を生かした多角的で総合的なマネーコンサルティングを提供している。かみくだいてやさしく解説するセミナーは、わかりやすいと評判。

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