第11回

東急世田谷線
「山下・世田谷」で暮らす・貸す住まい

世田谷区には東急世田谷線という路面電車が走っています。色鮮やかな二両編成の小さな電車は、日本橋から直線で約10kmの位置を南北に走り、3つの私鉄を縦に結ぶ利便性があります。また、豪徳寺など歴史的な名所や、世田谷城阯公園など緑のある住宅地が形成されています。今回は、このエリアの地域の魅力や歴史と不動産動向を紹介します。

ここがポイント
  • 世田谷線は、東西に走る田園都市線小田急線京王線を縦に結ぶ路面電車。
  • 沿線には、関東大震災の疎開地として被災者が流入した経緯で、木造密集地がある。
  • 世田谷線の沿線の地価は、公示、基準地ともに2014年から2017年にかけて上昇。
  • 世田谷駅では2LDK-3DKの賃料が高額で、三軒茶屋駅と同程度の賃料水準

1.世田谷線は区内の3私鉄を結ぶ路面電車、その周辺には木造建物が密集している。

東急世田谷線は世田谷区を走る路面電車で、都内に2路線しかない路面電車のひとつです(もうひとつは都営荒川線)。三軒茶屋駅から下高井戸駅までの約5kmを結び、東西に走る田園都市線、小田急線、京王線を縦に結ぶ鉄道としての役割も担っています。世田谷線のほとんどの駅は無人駅です。小さな無人駅に改札口はなく、運賃はバスと同じように車内で支払います。地面に手が届きそうな低い車両で走る世田谷線は、ほかの電車では味わえない視線で風景が流れる、レトロな雰囲気が魅力の路線です

世田谷線の沿線は、関東大震災の疎開地として下町から多くの被災者が流入した経緯があり、いまでも木造の建物が密集しているのが特徴です。そのため区内で指定された、建物の不燃化を促進する特区の4分の3が、世田谷線の沿線に集中しています。この特区では、老朽化した建物を一定の条件で解体、建替えする場合に、助成金を交付するなどして、不燃化建物への建替えを促進しています
(2017年1月のコラム参照)

出典:東急電鉄ホームページより

出典:東急電鉄ホームページより

2.山下駅は小田急線との乗換駅。利便性だけでなく沿線を代表する名所のあるエリア。

山下駅は小田急線の豪徳寺駅との乗換駅です。古くからの商店街があり買い物に便利で、おしゃれな飲食店も点在しています。近隣には、招き猫発祥の寺といわれる豪徳寺があり、吉田松陰を祀る松陰神社とともに、沿線で歴史を感じさせる名所のひとつです。

世田谷線の沿線の地価は、公示、基準地ともに2014年から2017年にかけて上昇しています。日本橋から直線で約10kmの利便性に加えて、歴史と緑のある静かな住環境が沿線の魅力として評価されているものと考えます。

また、駅の近くから小田急線の経堂駅に向かってユリの木公園通りが続いています。この周辺の赤堤エリアで地価が高額なのは、世田谷線の西側では既に区画整理が行われ、街並みが整備されているためです。

  • ※1 国土交通省の公示価格(*印)および、東京都の基準地価からグラフを作成しています。
  • ※2 住所は公示地(*印)、基準値の所在を示し、丁目と番地まで表示しています。
  • ※3 住所後ろの()内は、都市計画法の用途地域を略して表示しています。
    1低専=第一種低層住居専用地域。低層住宅の良好な住環境を守るための地域。
    1中高=第一種中高層住居専用地域。中高層住宅のための地域。
    1住=第一種住居地域。住居の環境を守るための地域。
    2住=第二種住居地域。主に住居の環境を守るための地域。

3.世田谷駅は、住環境だけでなく行政施設の利便性も兼ね備えたエリア。 

世田谷駅は、世田谷区役所など行政施設の中心に近い駅ですが、ほかの区役所とはまったく違って、この周辺は閑静な住宅街が形成されています。区役所周囲に大きな道路がないことが理由です。また、世田谷城阯公園のように歴史と緑地を兼ね備えた空間もあり、落ち着いた住宅環境に大きく貢献しています。
 ただし、12月と1月に世田谷駅と上町駅の間で開催されるボロ市では、街の様子が変わります。700もの露店が並び、大勢の人で賑わいます。ボロ市は、北条氏政により世田谷城下で始められた楽市から続き、400年もの歴史がある伝統行事です。

世田谷線の沿線の賃料は、都心に近く高めに設定されています。しかし、建物が密集しているため、3LDK以上の大型の賃貸住宅がないことも特徴です。各駅の比較でみると、世田谷駅では2LDKから3DKの賃料が高額で、田園都市線のある三軒茶屋駅と同程度の賃料です。これは住環境だけでなく、小さい子供のいるファミリー層が、行政施設の利用も注視しているためと考えます。

世田谷線では、玉電110年記念に合わせ、招き猫をラッピングした「幸福の招き猫電車」を、2018年3月までの予定で走らせています。路面電車ならではの風景を楽しみながら、世田谷線周辺の住まいについて考えてみては如何でしょうか。

※4 不動産情報サイト アットホーム:東急世田谷線周辺の家賃相場からグラフを作成

筆者:安食 正秀 (相続アドバイザー協議会R認定会員 上級アドバイザー)

1963年東京生まれ、立教大学経済学部卒。
2006年7月、株式会社アセット・アドバイザーを設立。財産を次世代に承継することを最優先に、顧客の不動産の全体像を把握し、様々な視点から不動産の相続対策の立案、問題解決および実務支援を行う。夕刊フジで「激変!相続税に備える」を連載。
2016年1月千葉テレビに出演。首都圏を中心にセミナーや執筆など人気講師として活躍中。

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