第12回

小田急線
「経堂・成城学園前」で
暮らす・貸す住まい

小田急線は、新宿を起点とし小田原、江の島、多摩ニュータウンを結ぶ路線です。2018年3月に下北沢駅付近の複々線化が完成し、大規模なダイヤ改正が予定され、利便性が大幅に向上します。世田谷区内には特徴的な駅が9駅あります。今回は、経堂駅成城学園前駅を中心に、このエリアの地域の魅力や歴史と不動産動向を紹介します。

ここがポイント
  • 経堂周辺は、「居住の楽地」として早くに開発され、特に赤堤の土地価格が高額である。
  • 成城は学園と共に発展した街、景観も美しく、協定に守られた街は地価が経堂より高額。
  • 賃貸は、成城より経堂が高額。都心からの距離や交通の利便性が重視されている。
  • 2018年3月に下北沢駅の複々線化が完成、大規模なダイヤ改正で利便性が向上する。

1.小田急線は、通勤路線と観光路線の役割があり、区内の各駅にはそれぞれ特徴がある。

小田急線は、新宿を起点とし小田原、江の島、多摩ニュータウンを結ぶ合計120.5kmの路線です。都内への通勤路線の役割と、ロマンスカーに代表される小田原、箱根方面への観光路線の役割を持っています。新宿~小田原間は1927年4月に開通しました。いまから90年前です。その工期はたったの1年半、昼夜問わず不眠不休で工事が行われたそうです。1957年に、特急ロマンスカーSE(3000系)は時速145kmの世界最速(狭軌)を記録しています。当時の国鉄つばめ号の最高時速95kmに比べて50km/hも速かったのです。

 世田谷区内には、小田急線の駅が9駅あります。演劇と美食の下北沢、羽根木公園のある梅が丘、招き猫発祥の豪徳寺、ウルトラマン発祥の祖師ヶ谷大蔵、野川緑道のある喜多見など、特徴のある駅が多いです。今回は、その中でも高級住宅地として名高い、経堂駅と成城学園前駅について紹介します。

2.経堂駅は、農村から宅地へと早期に開発、車両基地跡地に商業施設ができて活性化。

経堂駅の商店街の道路は、室町時代から甲州と東国を継ぐ主要街道でした。開発は早く、1932年に赤堤町で区画整理事業が着工、高低差のない広大な宅地に造成され、道路が整備されました。経堂でも1955年頃から区画整理が行われました。赤堤にある区画整理の記念碑には「面目一新区画整然たる居住の楽地と化す」と刻まれ、農村が住宅地へと一気に変化した様子が伺えます。

 経堂駅には開業当初に車両基地がありました。車両編成が長くなり基地が移転した跡地には、系列のスーパーマーケット(現、OdakyuOX/経堂コルティ)が開業し、経堂のシンボルとして、街を活性化させました。経堂駅の周辺は、地区計画が定められています。計画区域内で建築行為等を行う際には、区に届出が必要です。

 その地価は、経堂駅の西に広がる経堂に比べて、北東に広がる赤堤のほうが高額です。これは街並みだけでなく、世田谷線や京王線への利便性も評価されているからです。

  • ※1 国土交通省の公示価格(*印)および、東京都の基準地価からグラフを作成しています。
  • ※2 住所は公示地(*印)、基準値の所在を示し、丁目と番地まで表示しています。
  • ※3 住所後ろの()内は、都市計画法の用途地域を略して表示しています。
    1低専=第一種低層住居専用地域。低層住宅の良好な住環境を守るための地域。

3.成城は学園と共に発展、桜並木や銀杏並木など景観の美しい街を住民の協定で保全。

成城周辺は、駅名の通り成城学園とともに発展してきました。駅北側は、小田急線の整備を聞いた小原國芳が、学園建設資金の捻出のために、区画整理をして住宅地として売却し、駅南側は、学園にも土地を寄贈した大地主の鈴木久弥が売却しました。駅の誘致も小原國芳の交渉によるものです。

 成城は桜並木や銀杏並木など景観も美しい街です。成城では、古くからの住民によって協定(成城憲章)が結ばれています。緑に配慮して塀を生垣にする、建物の位置を後退させるなど、環境を守るための建築制限が定められています。

 地価をみれば、経堂より成城のほうが高額です。しかし、賃料は経堂のほうが高額です。やはり土地建物を所有して居住するには、住環境と教育が整った成城が優位ですが、賃貸で居住するには、商業性と利便性で経堂が優位なようです。

 小田急線では、2018年3月に下北沢駅付近の複々線化が完成します。この完成に伴うダイヤ改正では、列車の本数が最大1時間あたり27本から36本へと増加されます。同時に新宿までの時間も短縮され、東京メトロ千代田線への直通運転が増えます。更に交通の利便性が高まる小田急線周辺の住まいについて考えてみては如何でしょうか。また、不動産活用を検討する際には、地域の情報収集も含めて、住宅展示場の担当者に相談してみると良いでしょう。

※4 不動産情報サイト アットホーム:小田急線周辺の家賃相場からグラフを作成しています。

筆者:安食 正秀 (相続アドバイザー協議会R認定会員 上級アドバイザー)

1963年東京生まれ、立教大学経済学部卒。
2006年7月、株式会社アセット・アドバイザーを設立。財産を次世代に承継することを最優先に、顧客の不動産の全体像を把握し、様々な視点から不動産の相続対策の立案、問題解決および実務支援を行う。夕刊フジで「激変!相続税に備える」を連載。
2016年1月千葉テレビに出演。首都圏を中心にセミナーや執筆など人気講師として活躍中。

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